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更新日 2017-10-27 | 作成日 2008-01-31

相続税シリーズ第一回

あなたの相続税対策、本当に合っていますか?

 平成27年1月1日より、大幅に相続税の基礎控除額が下がったため、世間では様々な「相続税対策」が目白押しになっています。もちろん役に立つものもありますが、その対策が原因で争族になり、財産が消滅し、一族離散など悲しい結末を迎えることもあります。「相続税対策」の基本は、相続財産を合法的に減らすこと、そして、争族にならないようにすることです。

1.贈与

 生前贈与は相続財産を減らすことが出来るため、有効な「相続税対策」です。しかし実際の場面では贈与そのものが成立していない場面があまりにも多すぎます。あげたつもり、もらったつもりで多くは課税当局に否認されています。

 通帳、印鑑、キャッシュカードなど実態を証拠だてるものはもらった人の手許になければいけません。

 この方法で問題の起こるのは、実際に相続が発生した時です。相続が生じた時に初めて贈与の実態が明らかになり、途端に相続人間で大揉めになります。

 よって、生前において親はどのように生前贈与するのかを相続人に伝え、証文(公正証書)をとっておくことをオススメします。また、贈与しすぎて親の老後資金がなくなることも想定する必要があります。

 教育資金贈与、結婚子育て資金贈与等の制度は①親族間で不公平となる②子、特に孫の希望をよく聞くこと(途中で目的変更があると課税となる)③あげすぎによる老後破産の危険性④孫の場合、相手の親族トラブルなど気をつけなければならないことがあります。したがって無理してこれらの手法を使うこともないのです。節税のみに走るのではなく、一族が円満になることが一番大事なことなのです。

2.保険について

 生命保険は正に死亡した時にまとめて入金となるもので、遺族のための生活資金ないしは相続税の納税資金に充てるものです。
 生命保険による節税メリットを挙げてみますと、大きく3つあります。
(1) 納税資金の準備 
(2) 遺産分割の円滑化 
(3) 課税される財産額削減
  保険は、契約者、被保険者、受取人から成り立っています。ここで受取人を誰にするかでまた争族になる可能性大です。受取金額と受取人によって大きな差が出るので注意が必要です。

 現場でしばしば生じるケースとして、生前中、保険金の受取人を他の相続人に変えてしまうことがあります。事前に相続人に伝えないとこれもやはり争族の原因となってしまいます。

 また、死亡保険金の課税関係は次の通りです。

 死亡保険金の課税関係の表

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3.不動産について

 不動産会社は「相続対策」としてしきりに建物を建てさせようとしますが、せっかく「相続対策」と思って購入したものが、逆に財産減らしになってしまう等、慎重に対応しなければなりません。

 不動産購入の注意点は下記の4点です。

(1)賃貸マンション購入はリスクがつきもの
 老朽化によるコスト増、入居者間のトラブル、不動産価格そのものの下落等のリスクがあります。
(2)遺産分割がしにくく、不動産で争族の原因になる
(3)共有名義にしない
(4)不動産購入による納税資金の枯渇

 場面によっては、納税が増えても争族を防ぐ事を優先する事が何よりも大事だと思います。

平成28年度税制改正
 平成28年度税制改正の主な改正案は以下の通りです。

1.法人課税の改正

(1)法人税の新税率
 平成28年4月1日以後に開始する事業年度について、法人税の税率が段階的に引き下げられます。

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(2)減価償却制度の見直し
 平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物について定額法へと一本化されました。ただし、鉱業用減価償却資産については、定額法又は生産高比例法の選択適用が可能です。

(3)欠損金の繰越控除制度の見直し
 平成28年4月1日以後の各事業年度において、繰越欠損金の控除限度額が三段階で縮小されました。

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(4)法人事業税の税率引き下げと外形標準課税の拡大
①法人事業税の税率 
 改正後の新税率は次のとおりです。

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 所得割の税率下段の括弧内の税率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率で、当該税率の制限税率が標準税率の2倍(現行:1.2倍)に引き上げられます。

②地方法人特別税の税率の改正
 資本金1億円超の普通法人について、地方法人特別税の税率が次のとおり引き上げられることとなりました。

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③外形標準課税の拡大による負担増の軽減措置
 外形標準課税の拡大により税負担が増えるので、付加価値額40億円未満の法人に限り、外形標準課税の軽減措置が設置されました。

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(5)法人住民税、法人税割の税率の改正
 法人住民税法人税割の税率が平成29年4月1日以後に開始する事業年度より、次のとおり引き下げられることとなりました。

 また、地方法人税の税率が現行の4.4%から10.3%に引き上げられることとなり、地方法人特別税は廃止され、法人事業税に復元されます。

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(6)雇用促進税制の改正及び延長

①雇用促進税制の改正内容
 雇用促進税制は次のとおり改正されました。

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②地方拠点強化税制での拡充
 平成27年度に導入された雇用促進税制について、所得拡大促進税制との併用が可能となりました。

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(7)地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設
 企業が行う寄附に対し損金不算入制度例外措置に加え法人税から控除できます。

■企業版ふるさと納税による税額控除のイメージ

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(8)国家戦略特別区域における指定法人の所得の特別控除制度の創設
 以下の要件を満たす内国法人は、所得金額×20%を所得金額から控除することができます。

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(9)生産性向上設備投資促進税制の適用期限による廃止
 生産性向上設備投資促進税制について、平成29年3月をもって廃止されます。

・対象資産
 A類型(先端設備)→工業会の確認
 B類型(生産ラインやオペレーションの改善に資する設備)→経済大臣の確認

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(10)その他の租税特別措置法の見直し

①中小企業者等の少額減価償却資産の特例
 中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入特例の適用期限を2年間延長(平成30年3月まで)

②交際費課税
 交際費の損金不算入制度について、適用期限を2年間延長(平成30年3月まで)

③欠損金の繰戻還付
 中小企業者等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限を2年延長(平成30年3月まで)

④グリーン投資減税
 グリーン投資減税(環境関連投資促進税制)の適用期限を次の見直しを行った上で、2年延長(平成30年3月まで)
  イ.風力発電設備の即時償却を廃止
  ロ.太陽光発電設備を電気事業者による再生可能エネルギー電気調達措置法の認定発電設備以外の資産とする
  ハ.税額控除の対象資産から車両運搬具を除外

⑤役員給与の損金算入
 役員給与の損金算入制度に、ROE指標による業績連動報酬や株式報酬の導入

⑥株式交換・移転に係る税制の見直し
 役員継続要件の見直し、親法人が取得する子法人株式の取得価額の調整計算等の見直し

2.個人所得課税の改正

(1)空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例のあらまし

・概要
 改正により、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋(昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、相続開始直前において被相続人以外に居住をしていた者がいない場合に限る)、及び相続開始の直前において被相続人の居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等を相続により取得した個人が、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に、一定の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡所得の金額について、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除を適用できるとこととされています。

・譲渡要件
 相続の時から、相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にした①又は②の譲渡に限るものとされ、その譲渡対価の額が1億円を超えるものは除かれます。

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・その他の要件
 この特例は、確定申告書に、上記①又は②の要件を満たすことを確認した旨を証する書類、その他の書類の添付がある場合に適用されます。

(2)住宅の三世代同居改修工事等に係る特例の創設
①住宅の三世代同居改修工事等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額の特例
 個人が所有する居住用家屋について、一定の三世代同居改修工事等を行い、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住を開始した場合、その工事のための借入金の年末残高(限度額1,000万円)に応じて、次の(イ)(ロ)に定める金額の合計額を5年間、所得金額から控除できます。

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②既存住宅に係る三世代同居改修工事をした場合の所得税額の特別控除
 現在、一定の省エネ改修工事又はバリアフリー改修工事を行った場合に、標準的な費用の額10%相当額をその年分の所得税額から控除できる制度がありますが、その対象として「一定の三世代同居改修工事」が追加されます。

平成28年4月1日から平成31年6月30日までに居住を開始することが要件で対象となる工事費用の限度額は250万円です。なお、その年の合計所得金額が3,000万円超の人、既に通常の住宅ローン控除や「特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の適用」等の適用を受けている人は、本特例を適用できません。

(3)NISAにおける出国税の取扱い
 ①NISAに関する国外転出時のみなし譲渡価額の見直し

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この改正は、平成28年1月1日以後の国外転出に係るみなし譲渡価額について適用されます。

②国外転出をする場合の上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用範囲の見直し
上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる上場株式等の譲渡の範囲に、国外転出をする場合の譲渡所得等の特例又は贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用により行ったものとみなされた譲渡が加えられます。

 また、この改正は平成28年分の所得税から適用されます。

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(4)セルフメディケーション(自主服薬)推進のためのスイッチOTC薬控除(創設)

・適用時期
平成29年1月1日から平成33年12月31日まで

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(5)通勤手当の非課税限度額引き上げ
 平成28年1月1日以後に支給を受けるべき通勤手当について、非課税限度額が月額15万円に引き上げられます。

(6)生産性向上設備に係る固定資産税の減免措置

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(7)高額資産を取得した場合の中小企業者に対する特例措置

①高額資産を取得した場合の特例措置見直しの背景
 近年、消費税の還付制度や簡易課税制度と、特別目的会社(SPC)を組み合わせた消費税の節税スキームが横行していたことから、平成28年度税制改正ではこの節税を封じるための改正が実施されます。

②問題のスキーム

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③改正内容
 上記スキームを封じるため、簡易課税制度を選択していない課税事業者が、高額資産の仕入れ等を行った場合には、その仕入れ等を行った日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けることができなくなります。

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④適用時期
 この改正は、平成28年4月1日以後の高額資産の仕入れ等を行った場合に適用されます。ただし、平成27年12月31日までに締結した契約により平成28年4月1日以後に高額資産を取得した場合は適用されません。

⑤その他節税ができなくなるケース
 課税事業者選択後、2年経過後に調整対象固定資産を取得した場合、基準期間に課税売上がなければ免税事業者となり、調整を回避することができましたが、今回の改正により、取得した資産が高額資産に該当する場合は、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けることができなくなります。

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3.納税環境整備に関する改正

(1)税務調査の事前通知後に行う修正申告に係る加算税の見直し

①事前通知後に修正申告書を提出した場合の加算税の見直し
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②期限後申告または修正申告に基づく無申告加算税の見直し

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 税務調査の上手な受け方について~特に法人税について~

 税務調査は強制調査と任意調査がありますが、一般的な税務調査のほとんどは任意調査です。任意調査は質問検査権を駆使して行うもので、引出しの開け閉めも勝手にはできません。また、納税者は調査を拒否することはできず、調査に協力する義務を負わされ、必要書類の提示も求められます。

 法人税の実地調査のターゲットとして国税庁は以下の4つを重点項目としています。
(1)海外取引 (2) 消費税の不正還付 (3) 無所得申告 (4) 無申告

税務調査の通知は課税庁より本人と税理士に伝えられます。通知される項目は以下の通りです。
① 開始日時 ② 場所 ③ 目的 ④ 対象税目 ⑤ 対象期間 ⑥ 対象となる帳簿書類 その他(法令根拠) 
⑦ 国税に関する法令の規定により、備付け・記帳・保存しなければいけないもの ⑧調査・徴収の目的に必要と認められるもの

 税務調査の流れは、初日の午前中は、会社概要の確認、午後は主に売上、仕入、議事録チェックをします。2日目午前中に、人件費、経費、午後は初日と2日目の午前の部のまとめとなり、重要となれば日にちは延びます。調査時は、悪いことをしているわけではないので、正々堂々と協力的に進め、ミスが見つかっても直すべき個所は直すべきと心得、昔の事で憶えていない時は調べて返答すると伝えましょう。

 また、コピーをしてくれと言われた場合は、どの資料を持って行ったのかわかるようにするため、必ず調査官分と会社分とをコピーしましょう。調査官は専門用語を使うので、意味がわからない時は、必ず税理士に通訳してもらって下さい。

 特に目をつけられやすい科目等は次の通りです。
・議事録のチェック ・売上高の期ズレ計上分 ・雑収入 ・現金売上の漏れ 
・在庫商品のチェックはしてあるか ・人件費 ・役員報酬 ・外注費か給与か
・交際費 ・グループ会社でのチェック ・消費税 ・源泉税 ・印紙税
・前年から大きく変わった固定費、大きな買物

 顧問料を払っているので、税理士は会社の味方と思っている人がいますが、法律上、調査で税理士は中立な立場で税金計算をしなさい、となっています。

 基本的には、調査は税金の取立てを目的としています。状況によりますが、納税者側として否認事項を納得できないことがあります。そこで、税理士が事の実情をきちんと説明し、「それは税金を取るのは無理ですよ」とか、きちんと税知識・経理知識を駆使し、適切なアドバイス・助言ないしは交渉をするべきです。